1級ファイナンシャル・プランニング技能士のトクトク日記

お金に振り回されない人生を 損してトク取れ

第3章 セカンドライフの収入と支出


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加入している年金制度を確認する年金制度の基礎知識

加入している年金制度を確認

 年金は老後の生活を支える大切なお金です。将来のためにも年金が「いつから」「いくら」もらえるのかしっかり把握しておきましょう。

 日本の公的年金の特徴のひとつは、3階建てになっていることです。

 すべての人が加入する国民年金の制度を1階。

 勤務先の年金に加入している方が受けられる厚生年金の制度を2階。

 企業が従業員の福利厚生のために設けた企業年金部分を3階と呼んでいます。

 そして、自営業者やフリーランスの方たちを「第1号被保険者」。

 会社員や公務員の方達を「第二号被保険者」。

 第2号被保険者に扶養されている方達を「第3号被保険者」と呼んでいます。 

 例えば、会社員の場合は第2号被保険者で、受け取れる年金の種類は国民年金と厚生年金ということになり、自営業やフリーランスで会社勤めがない場合は国民年金だけということになります。

 

年金を受け取れる要件

 老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができます。

 厚生年金を受け取るには、国民年金保険料を10年以上、厚生年金保険料は1ヵ月以上支払う必要があります。

 65歳前に受け取る厚生年金は、報酬比例部分と定額部分があり、生年月日によって変化します。

 例えば、昭和35(1960)年4月2日生まれの男性は、60歳時点では何も受け取れませんが、64歳からは報酬比例部分の年金を、65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。

 同じ生年月日の女性の場合は、報酬比例部分の年金が62歳から受け取れます。

 65歳前の報酬比例部分を受給するためには、次の要件を満たす必要があります。

老齢基礎年金の受給資格期間(原則10年)を満たしている。

厚生年金の加入期間が1年以上ある。(65歳から受け取る老齢厚生年金は1カ月の加入で受け取れます)

 年金を受け取る資格があるのかは、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認することができます。

 ねんきん定期便は、受給資格の他にも年金をいくらぐらい受け取れるのかなども確認できるので、ねんきん定期便が届いたら必ず確認するようにしてください。

 

セカンドライフの収入と支出年金受給額の目安を知る

老齢基礎年金はどれくらい受け取れる

 老齢基礎年金はすべての人が受け取れる年金ですが、保険料を支払った期間によって受け取れる年金額は変わります。

 例えば、山田さんご夫婦の場合ですが、

夫の太郎さんは、学生時代の2年間は保険料を支払っていませんでした。就職してからは、給料から厚生年金が天引きされていたので、60歳で退職するまでの38年間は保険料を納めています。

 したがって、保険料を支払った期間は会社員時代の22歳から60歳までの38年間(456ヶ月)になります。

 これを基礎年金の計算式に当てはめると、480ヶ月のうち456ヶ月納めているので、年金額は74万1000円です。

 花子さんも、学生時代は保険料は支払っていませんでした。卒業後は就職し厚生年金が給料から天引きされています。

 結婚を機に花子さんは会社を退職し、太郎さんの扶養に入ることとしました。

 太郎さんは1歳年上なので、花子さんは60歳になるまでの1年間は自分で国民年金を支払わなければなりません。

 したがって花子さんの保険料を支払った期間の合計は、会社員時代の2年間(24ヶ月)と、扶養に入っていた35年間(420ヶ月)それと自分で支払った1年分(12ヶ月)の456ヶ月になります。

 花子さんも480ヶ月のうち456ヶ月納めたことになるので、年金額は74万1000円です。

 山田さんご夫婦の基礎年金額額は、合計で148万2000円になります。

 満額支給の場合だと78万円の2人分で156万円が夫婦の年金額ですが、2人とも学生時代に保険料を払っていなかったので、24ヶ月分少なくなりました。

 滞納している保険料を納付したり、免除を受けた期間について追納するなど、納付済み期間が480月に満たない場合は満額支給に近づける方法があります。

  • 滞納保険料を納付する
  • 免除等を受けた期間の追納をする
  • 60歳から65歳まで任意加入する(通算480ヶ月に達するまで加入可能)
  • 65歳から70歳まで任意加入する(受給資格期間を満たすまで加入可能)

 これらは不足分をカバーする方法ですが、そもそもの年金を上乗せする付加年金という制度もあります。

 付加年金制度とは、払っている保険料に毎月400円をプラスして支払うと、年金額に400円×支払った月数分が上乗せされる制度です。

 付加年金は400円払って200円上乗せされるので、2年間年金を受け取ればモトがとれる仕組みになっています。

 今のうちから受け取る年金額を確認するとともに、年金額を増やすことも考えておきましょう。

 

4つのポイントを確認するねんきん定期便の見方を知る

ねんきん定期便でチェックするポイント

 ねんきん定期便は、毎年一回誕生月に送付されています。内容は、これまで納めた保険料の実績や将来受け取れる年金額に関する情報です。

 特に、35歳、45歳、59歳の人は、すべての年金加入状況が記載されているので必ず確認し、ライフプランの作成に役立てましょう。

 ねんきん定期便を送付する目的は、これまでの年金記録を確認し、正しい記録で年金を受給してもらうことにあります。加入記録に漏れや誤りがないかをチェックするところから始めましょう。

  1. 20歳到達時の年金加入はあるか?
     平成3年3月までの学生は任意加入だったので、当時学生だった人は年金に加入してなく記録がない場合があります。
     高校卒業後すぐ就職したとか、結婚をしていたとしたら記録に間違いがないかを確認しましょう。
  2. 各記録の間の空いている期間に加入歴はないか?
    ・転職や転勤、出向などで加入期間の短い記録がある。
    ・退職後結婚して苗字が変更になった。
    ・学生の頃に国民年金に加入していた。
    ・勤務先が合併、社名変更、倒産した。
    ・名前の読み仮名が難しい。
     これらに該当する人は記録漏れがないか確認しましょう。
  3. 各記録の資格取得日と資格喪失日は正しいか?
     厚生年金保険の場合、原則として資格取得日は会社に入社した日で、資格喪失日は退職をした日の翌日となります。
     1日の違いでも被保険者期間が1ヵ月増減することがあります。
  4. 標準報酬月額や標準賞与額が、実際の給与や賞与に見合ったものであるか?
     老齢厚生年金額を計算するベースは、標準報酬月額と標準賞与額です。
     これらには上限があり、実際の賃金額とは乖離している場合があります。
     標準報酬月額の上限は65万円、標準賞与額の上限は1ヵ月あたり150万円で、保険料もこの金額をもとに算出されています。

 4つのポイントをチェックして、もし漏れや誤りがあったら年金加入記録回答表に必要事項を記載し、最寄りの年金事務所に提出してください。

 年金加入記録回答表は、節目年齢のねんきん定期便には返信用封筒とともに同封されています。その他、日本年金機構のホームページからダウンロードもできます。

 年金加入記録は「ねんきんネット」で確認することもできます。

 ねんきん定期便に記載のお客様のアクセスキーを用いるなどしてねんきんネットにアクセスすると、節目年齢に通知される内容と同様に全ての期間にわたり詳細な年金記録が確認できます。

 ねんきん定期便が届いたら、必ず確認するようにしましょう。

 

受給開始年齢は選ぶことができる繰上げ、繰り下げ受給を知る

年金の受け取り開始年齢は選ぶことができる

 年金の支給開始年齢は、引き上げられる傾向ですが、これは日本に限ったことではありません。アメリカやフランスなどは66歳とか67歳にならないと年金を受け取ることができません。

 日本の年金受け取り開始年齢は、65歳からが基本ですが、繰上げ受給や繰り下げ受給によって、60歳から75歳までの間は1ヶ月単位で受け取り開始年齢をずらすことができます。

 

繰下げ受給は1ヶ月あたり0.7%増加

 繰り下げ受給ですが1ヶ月遅くするごとに年金額が0.7%ずつ増えます。

 12ヶ月遅くして66歳から受給すれば年金額が8.4%増え、5年遅らせて70歳から受け取れば42%、最長の75歳まで遅らせて受け取ると84%も増えることになります。

 例えば、65歳から年額60万円の年金を受け取れる人が66歳または70歳、75歳へ繰り下げる場合をみてみると、

 66歳からだと年金額は65万400円(月額5万4200円)

 70歳では年金額は85万2000円

 最長の75歳からだと110万4000円になります。

 繰下げ受給は何歳から受け取り始めても12年弱受け取れば、65歳で受け取った時よりも受給総額は多くなります。

 老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか、または夫婦でいずれか一方の年金だけ繰下げ受給をするという選択もできます。

 しかし、繰下げの手続き後に取消しや修正はできず、一度決まった増額率による年金を受け取り続けます。

 それに、年金額が増額されても、年金額に応じて介護保険料や税金なども増えるので、増額率ほどに手取額が増えるとは限りません。

 

繰上げ受給は1ヶ月あたり0.4%減額

 早く年金を受け取りたい人は最大60歳まで1カ月単位で繰り上げることができます。

 早く受け取る繰上げ受給は、1ヶ月早く受け取るごとに年金額が0.4%ずつ減額になり、最も早く受け取れる60歳から受け取りを開始すると24%減額になります。

 例えば65歳から年額60万円の年金を受け取れる人が60歳または63歳へ繰り上げる場合をみてみると、

 60歳で受け取る年金額は45万6000円(月額3万8000円)

 63歳からでは54万2000円となります。

 このように、年金額は少なくなってしまいますが、繰上げ受給のメリットは早い時期から安定した収入を得られることです。

 60歳前後で早期に退職したり、事業が傾いたりして経済的に不安定になることもあるでしょう。

 そこで年金を前倒しで受給することで、早い時期から安定した収入を得られます。

 その他にも健康面に不安がある人の中には、「元気なうちに年金を受給して、自分の趣味や好きなことにお金を使いたい」と考える人もいるでしょう。

 そうした人にとっては、繰上げ受給はメリットと捉えることもできます。

 持病や健康面に不安がある人は、毎月の受給額が減額されても、早く年金をもらうことを検討してみても良いかもしれません。

 しかし、繰上げ受給のデメリットは年金額が少なくなるだけではありません。

 繰上げ受給をした後に障害状態になった場合は、原則、障害年金を受け取れません。

 繰上げ請求すると国民年金に任意加入できません。また、保険料免除や納付猶予を受けた期間の追納もできなくなります。

 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、セットで繰り上げなければいけません。

 

平均寿命や健康寿命も考慮する

 繰下げ受給は何歳から受け取り始めても12年弱受け取れば、65歳で受け取った時よりも受給総額は多くなり、受給開始を遅らせるほど年金額が増える制度であることは確かです。

 しかし、実際にどの程度長生きするかはわかりません。

 厚生労働省の「令和3年簡易生命表の概況」によると、日本の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳です。

 あくまでも平均ですが、必ずしも繰下げ受給した方が得だとはいえません。

 例えば、60歳から年金を繰り上げ受給した場合、80歳10カ月より長生きするのであれば、65歳から受給したほうが多くの年金をもらうことができます。

 年金の受給開始時期を考える際は、平均寿命だけでなく、健康寿命も考慮する必要があります。

 平均寿命とは0歳における平均余命のことですが、健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことをいい、2001(平成13)年から男性の方が女性より健康寿命は延伸しており、男女差も若干縮小しています。

 年金の支給開始年齢は受給額とともに、自分自身の健康状態などを考慮して検討する必要があるでしょう。

 

最低日常生活費とゆとりある生活費セカンドライフの生活費を知る

最低日常生活費とゆとりある老後生活費

 生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23万2000円です。

 分布をみると「20〜25万円未満」が、27.5%と最も多くなっています。

 ゆとりある老後生活を送るための費用として、最低日常生活費以外に必要と考える金額は平均14万8000万円となっています。

 その結果、「最低日常生活費」と「ゆとりのための上乗せ額」を合計した「ゆとりある老後生活費」は平均で37万9000万円となりました。

 なお、ゆとりのための上乗せ額の使途は、「旅行やレジャー」が最も高く、以下「日常生活費の充実」、「趣味や教養」と続いています。

 データから見るとセカンドライフの生活費は、最低23万円ぐらい必要で、ゆとりある生活を送るためには、38万円ぐらい必要ということがわかります

 もちろん、このデータをライフプラン表に入力してもらっても構いませんが、「そんなにかかってないけどなー」っていう人もいれば、「全然足りないよ」っていう人もいると思います。

 節約していたり、浪費家だったりいろんな要因があるとは思いますが、理由の一つにほとんどの人は、収入に応じた生活を送っているということが言えると思います。

 たとえば、収入が30万円だったら生活費は30万円以下になるはずです。

 無理して豪華な食事を食べたり、ブランド物を買ったりすることはあんまり考えられないと思います。

 

生活費を退職直前の手取り年収の6割で計算する

 平均的な数字以外に、もう一つ老後の生活費を見積もる方法を紹介します。

 それは退職する直前の年収の6割から7割ぐらいを生活費として計算する方法です。

 例えば退職直前の年収が600万円だと、手取り額は480万円ぐらいになるので、480万円の6割とか7割で計算すると年間の生活費は288万円〜336万円になります。

 したがって24万円〜28万円ぐらいが毎月の生活費として計算することができます。

 あなたのライフスタイルによって、生活費は異なってきますので、こういった数字を参考にリタイア後のライフプランを作成する場合は入力してみてください。

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